よく似た花、芍薬と牡丹の違いと見分け方
金子三保子
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春から初夏にかけて美しい花を咲かせる芍薬と牡丹。見た目がとてもよく似た両者の違いや見分け方をご紹介します。
目次
芍薬と牡丹の特徴
芍薬とは
学名:Paeonia lactiflora
英名:Peony
科名・属名: ボタン科ボタン属
分類:草本(宿根草)
芍薬はボタン科の宿根草。春になると地面から新芽を出し、伸びた茎から大輪の花が開花します。数多くの品種があり、初夏の切り花としても人気の高い植物です。
牡丹とは
学名:Paeonia suffruticosa
英名:Tree peony
科名・属名: ボタン科ボタン属
分類:木本(落葉低木)
牡丹はボタン科の落葉低木。一般的な牡丹の開花時期は春ですが、「寒牡丹」と呼ばれる春と冬の二回咲く種類のほか、春に咲く牡丹を開花調節によって冬に咲かせた「冬牡丹」もあります。
芍薬と牡丹の違いと見分け方
分類の違い
芍薬は草本
宿根草の芍薬。冬は地上部分は枯れ、春になると地上から茎が立ち上がり、茎の先に花が咲きます。全体の姿はスラリとしています。
牡丹は木本
落葉樹の牡丹。冬は落葉しますが、枝は地上部分に残ります。幹が枝分かれして、横に広がるように枝を広げ、茎の先に花が咲きます。芍薬に比べると、全体の姿はどっしりとしています。
開花時期の違い
左:牡丹 右:芍薬
写真のように、牡丹の花が見ごろになる4月の後半、芍薬はまだつぼみが固い状態です。
4月後半の芍薬
牡丹は桜が終わった頃の晩春(4月後半~5月前半)、芍薬は初夏(5月中旬~6月)に開花するため、開花している月でだいたい見分けることができます。
葉の違い
芍薬と牡丹は葉の形が違います。葉のある時期なら簡単に見分けることができます。
芍薬
芍薬の葉は、一枚単位で見ると、先に向かってほっそりとした形です。牡丹に比べると、葉の周囲は丸みを帯びています。
牡丹
牡丹の葉はツヤがなく、ギザギザとしています。
花の違い
咲ききった花ではなく、まだ固いつぼみにご注目ください。どちらも開くとびっくりするくらい大輪の花になりますが、つぼみの最初はゴルフボールくらいの大きさです。
芍薬
芍薬のつぼみは、お団子のような球状の形をしています。
牡丹
牡丹のつぼみは、先がとがっています。
咲き始めの牡丹
ハイブリッドシャクヤクとは
左:ハイブリッドシャクヤク 右:芍薬
ハイブリッドシャクヤクとは、芍薬と牡丹を交配してできた新しい芍薬のこと。
もともと芍薬には黄色、アプリコット色などはなかったのですが、この交配によって黄色い芍薬が日本で生まれ、その後、欧米で育種が進み、今ではたくさんの素敵なハイブリッドシャクヤクがあります。
切り花として花屋さんに並ぶときは、「芍薬」の名で並んでいますが、芍薬とハイブリッドシャクヤクでは、花のつぼみと葉に違いがあります。
芍薬とハイブリッドシャクヤクの葉の違い
左:ハイブリッドシャクヤク 右:芍薬
どちらも葉につやはありますが、ハイブリッドシャクヤクの葉は牡丹と似て、ギザギザしています。
左:芍薬 右:ハイブリッドシャクヤク
ハイブリッドシャクヤクのつぼみは牡丹に似て、先がとがっています。
「色が黄色やアプリコット」、「葉やつぼみが牡丹に似ている」なら、それは「ハイブリッドシャクヤク」の可能性が高いでしょう。
今度、芍薬や牡丹を見かけたら、つぼみや葉もじっくりと見てみてくださいね!
▼編集部のおすすめ
芍薬(シャクヤク)
- 芍薬(シャクヤク)はアジア原産のボタン科の多年草。春になると地面から新芽を出し、伸びた茎から大きな花を咲かせるのが特徴です。 芍薬(シャクヤク)は中国北部、シベリア南東部、朝鮮半島などに自生し、中国では古くから栽培されてました。薬用植物としても知られ、花から根まで余すことなく使用され、江戸時代からは「茶花」として観賞用としても親しまれてきました。その後、改良され、現在では数多くの品種が作られ、初夏の切り花としても人気の高い植物です。 花を見ただけでは見分けがつかない、よく似た花を咲かせる牡丹(ボタン)とは全く違う植物です。牡丹(ボタン)は落葉低木で「木」、芍薬(シャクヤク)は「草」として分類されます。 最近では、芍薬(シャクヤク)と牡丹(ボタン)を掛け合わせたハイブリッドシャクヤクも登場し、以前はなかった黄色の芍薬(シャクヤク)も流通しています。
- 牡丹と芍薬の花はよく似ていますが、芍薬は草本、牡丹は木本の落葉低木です。春になると新芽が芽吹き、先端に花径15~40cm程の花をつけます。花形は一重、八重、千重、万重、獅子咲きなど、種類が多い植物です。 一般的には春咲きの春牡丹ですが、春牡丹より小ぶりで、春と初冬の年二回咲く寒牡丹という種類もあります。その他、冬牡丹と呼ばれている牡丹は、春牡丹を温度管理によって人工的に冬に咲かせたものです。 牡丹の花色は白、桃、紅、朱赤、黄、絞りや複色など種類が豊富です。中国原産の花木で、奈良時代に薬用木として渡来し、その後改良が進んだ結果、中国の品種とは異なる独自の品種群がつくりだされました。欧米で改良された品種群にフランスボタン、アメリカボタンがあります。